プロフェッショナルマネジャー 付録「創意」と「結果」7つの法則 柳井正

経営者の中には、努力すれば成果はついてくると単純に思われている方、一つずつ課題を解決する努力を積み上げていけば結論が出ると言われる方が非常に多い。僕も昔はそうだった。

だが、努力しても、その方向性が間違っていたら結論は得られない。一歩一歩積み上げてやっても、10回繰り返せば、10歩だけ歩んだことになるが、目指すべき目標が何かの結論は見えてこない。何かを実行しようと思ったら、最終的な目的や目標を最初に明示しない限り、行動は起こせない。 

「本を読む時は、初めから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれと逆だ。終わりからはじめて、そこへ到達するためにできる限りのことをやるのだ。」

僕は、基本的に、誰も経験していない成功のノウハウは、ほとんどありえないと思っている。他企業や他産業にできたことは、我々にもできると信じてる。 

失敗の原因は、「3年間で50店舗」という言葉が一人歩きし、まず1店舗から儲けを出すことを基本に、儲かる仕組みを徐々に拡大す流という基本を怠ったことにある。ジェニーン氏は、「経営の秘訣」の賞で「最初の四半期に目標を達成できなかったら、年間の目標も達成できない」と書き、「現四半期はダメでも、年度末までに決まりをつけるさ」と行った態度を厳しくいさめている。  

僕は1億円の商売と10億円の商売は違うし、100億円の商売もやり方が違ってくると思っている。だから、経営トップが組織図を書くという作業をやり続けないと、組織は硬直化してしまう。組織ができあがると、組織の論理が優先され、変化を求めず、安逸を貪ろうとする。それが楽だからだ。

これを打破するには、組織は仕事をするためにあり、組織のために仕事をするのではないということを決定的に知らしめる必要がある。それは、絶えざる組織改革であり、現実に即した柔軟な人材の異動を行うことだ。僕は、組織図は毎日でも変えたいと思っている。 

ノー・サプライズ経営のための必須要件として、ジェニーン氏は「プロフェッショナル・マネジメント」という最高の芸術は、"本当の事実"をそれ以外のものから"嗅ぎ分ける"能力と、さらには現在自分の手元にあるものが、"揺るがすことができない事実"であることを確認するひたむきさと、知的好奇心と、根性と、必要な場合には無作法さもそなえていることを要求する」と指摘した。

彼は事実には、"揺るがすことができない事実"以外にも、4つの事実があると書く。"表面的な事実(一見事実と見える事柄)"と"仮定的事実(事実と見なされていること)"、"報告された事実(事実として報告されたこと)"、"希望的事実(願わくば事実であってほしい事柄)"である。 

「会社と統率する人間は、その会社の人びとが本当は彼のために働いているのではないということを認識しなくてはいけない。彼らは彼と一緒に自分自身のために働いているのだ。彼らはそれぞれの自分の夢を、自己達成への要求を持っている」 

「私が反対知るのは、きれいな机のエグゼクティブのオフィスの様子とか机の上の状態よりむしろ、彼の心的態度に対してである。きれいな机は科学的経営への、ビジネス・スクール仕立ての方式への、データの整理保存への、過度に厳格な時間配分への、機構化した権限移譲への、そしてまた未来が自分のプラン通りのものを生み出すというあてにならない確信に基づいた無保証の地震と独りよがりへの固執を象徴している。そんなものを、夢にも信じてはならない」 

「(エゴチスム)の真の害悪は(中略)抑制されない個人的虚栄心が高進すると、その本人が自分自身のエゴの餌食になってしまうことだ。彼はやがて自分自身が行った新聞発表や、部下のPRマンが彼のためにこしらえた賛辞を信じ込むようになる、そして自分自身と虚栄心の中にのめり込んで、他人の感情への感受性を失ってしまう。常識も客観性も失われる。そして、意思決定の過程を脅かす厄介者となる。」 

僕は夜の会合やパーティを遠慮させてもらっている。僕はずっと失敗を続けてきたが、確実に一勝は挙げた。それでも「ずっと失敗を続けてきた」という思いのほうが僕にとっては強い体。僕がやるべきことは、まだ本業に専念することだ。 

「ビジネスにおいて修復不可能の失敗は、キャッシュが尽きてしまうことである。それ以外なら、ほとんどどんな失敗でもなんとか回復の道がある。しかし、キャッシュが尽きてしまったらゲームはそれで終わりだ」

 

プロフェッショナルマネジャー

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